オランダで働く多くの方が、給与課税前の賃金と手取り額が大きく異なることをご存じでしょう。オランダでは、手取り額は給与総額の平均70%に過ぎません。では、残りの30%はどこに行くのでしょうか?

今回のブログでは、オランダの労働者の給与の構成要素を分解し、それぞれのコストがどのようなものなのか、また各コストは雇用者または被雇用者どちらが負担するものなのか、知っているようで知らないオランダの給与の内訳を解説していきます。

給与の構成

まず、オランダの労働者の給与の基本構成は、給与、給与税、社会保険料、その他経費の4つから成ります。

まず、社員の「手取り」の基本的な計算式から分解してみましょう。計算式は以下の通りです。

(グロス給与額+8%の休暇手当)= ネット給与額+給与税

グロス給与

オランダで一般的に雇用主が給与の金額について話すときはグロスの金額を指します。これはあくまで課税・各種控除前の額面給与であり、給与税や社会保険料の負担のベースとなる金額です。

休暇手当(vakantiegeld)

オランダの労働者は、休暇手当を受け取る権利を有します。オランダの休暇手当は、労働者の給与総額の少なくとも8%を占めます。この休暇手当は、毎年5月または6月に雇用主から労働者へと支払われます。

給与税

多くのヨーロッパ諸国は、給与税が著しく高いという評判がありますが、これは、労働者の生活を公平で魅力的なものにするための政府プログラムが充実していることに由来しています。

以下では、オランダの給与税が具体的にどこに行くのか、またそれぞれの費用は雇用者が負担するのか、それとも源泉徴収された給与を通じて労働者が支払うのかについてそれぞれ見ていきます。

雇用主が支払う負担金

オランダの雇用主は、以下の社会保険料を納める義務があります。

失業保険(WW)

雇用主は、社員のために失業給付保険料(WW)を支払います。有期契約の社員に対するこの保険料の税率は、フレキシブル雇用契約の社員に対する保険料の税率よりも低くなっています。

就業不能時保険(WIA)

この法律は、疾病により104週間以上働けない人のために設けられたものです。就業不能の程度によって、受け取る給付金が異なります。

職場復帰基金(WHK)

この保険料は、病気や障害を持つ社員の所得を政府が確保するための費用を賄うために、雇用主が支払うものです。雇用主は、職場復帰基金(Whk)の保険料を支払いますが、その金額の一部を被雇用者の給与から差し引くことができます。その場合、給与明細に記載されます。

疾病給付(ZW)

この法律に基づいて、雇用主は、社員が病気にかかってから104週間は、給与の一定割合を病気の社員に支払い続ける義務があります。

労働者の給与から源泉徴収される費用

雇用主は、社員の給与から給与税とその他の社会負担金を源泉徴収し、税務署(Belastingdienst)に納付します。

給与税

給与税または賃金源泉徴収税(’Loonbelasting’)は、個人所得税に対する前払いになります。

一般老齢年金(AOW)

AOWはオランダの基本的な公的年金です。オランダに住み、働いている人は誰でも、この年金を積み立て、公的年金年齢に達した際にそれを受け取ることができます。

一般遺族給付(ANW)

この制度の目的は、労働者が死亡した場合、または就労が著しく困難となった場合に、その家族を支援することにあります。労働者が死亡した場合、または労働能力が45%しかないと宣告された場合、配偶者またはパートナー、および18歳未満の子供にこの給付金が支給されます。

長期介護法(WLZ)

長期介護は、精神的または身体的な制限により日常的にサポートが必要な人のための一般保険として導入されています。オランダに居住または就労する人々の大半が、WLZスキームの下で自動的に保険に加入しています。

健康保険法(ZVW)

オランダの労働者は、健康保険料として所得に応じた負担金を支払わなければなりません。この保険料は所得の何割かを占めます。

社会保険料

社員の人件費を決定する際には、単純な給与額だけでなく、給与税、社会保険料なども考慮する必要があります。平均して、雇用主はグロス給与に加え、給与関連の費用として50~65%の割増を見込んでおく必要があります。

これには、オランダの労働者に恩恵を与える社会制度への拠出が含まれています。国の失業保険、就業不能時保険、職場復帰基金、疾病給付金などがそれに当たります。

出産手当金

妊娠中の社員には、4~6週間の産前休暇と10週間の産後休暇の権利があります。出産が予定日より遅れた場合、休暇は実際の出産後に開始されるため、合計で16週間より長くなる場合もあります。産前産後休暇期間中は、社員は給与の100%を受け取る権利があります。

また、雇用主は社員に代わって、被雇用者保険機関(UWV)に出産手当金を申請することができます。

傷病手当金

オランダでは、雇用する社員が病気にかかってしまった場合、社員の最も直近の給与額の少なくとも70%を最長2年間雇用主が支払い続けることが義務付けられています。

介護休業手当

オランダでは、労働者は子供、パートナー、親などの病気の親族の世話をするため(短期間)介護休暇を取得する法的権利を有します。労働者には12カ月間に、週労働時間の2倍に相当する短期介護休暇を取得する権利があります。この間、雇用主はこの休暇を取得する社員の給与の70%以上を支払い続けなければなりません。命にかかわる病気の場合はより長期の介護休暇が可能ですが、この間、雇用主には給与支払い義務はありません。

有給休暇

休暇手当とは別に、オランダの労働者には、フルタイム勤務を前提に、年間最低20日(4週間)の有給休暇を取得する権利が法的に認められています。有給休暇の時間数は週当たりの労働時間の4倍として計算します。

その他の費用

社員に対してより魅力的で競争力のある給与パッケージを提供したい場合は、通勤費の支給、研修手当、物品の贈呈、フィットネス手当など、非課税または割引料金で社員に提供できる福利厚生があります。

オランダでの人事および給与に関するご相談は、オクタゴン・プロフェッショナルズのジャパンデスクまで日本語でお気軽にご相談ください。

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