
職場におけるニューロダイバーシティ(神経多様性)の理解を深めることが非常に重要です。現代の職場は、多くの場合「神経定型」とされる、発達や情報処理、感情・社会的な反応の仕方がいわゆる「平均的」「一般的」とされる範囲にある人々を前提に設計されています。そのため、ニューロダイバーシティな人々にとっては働きにくさを感じる場面が少なくありません。本記事では、ニューロダイバーシティな人々が職場で活躍できるよう、人事が果たせる役割について考察していきます。
ニューロダイバーシティ(神経多様性)とは?
ニューロダイバーシティ(神経多様性)とは、自閉症、ADHD、ディスレクシア(読字障害)、ディスプラクシア(協調運動障害)など、さまざまな神経的特性を包括する用語です。かつては「障害」や「病気」とみなされていたこれらの特性も、今では「異なる思考のかたち」として受け入れられるようになってきました。
人口のおよそ10%がニューロダイバーシティであると推定されていますが、実際には診断の困難さから、この割合はさらに高いと考えられています。つまり、職場の従業員にも同様の割合でニューロダイバーシティな人がいると考えるべきであり、彼らが持つ力を最大限に引き出すには、ニーズを理解し配慮することが求められます。
伝統的な職場がニューロダイバーシティな人々を排除している現実
ニューロダイバーシティの理解が広まったのは比較的最近のこと。そのため、多くの職場は神経定型の人々に合わせて設計されています。しかし、こうした「伝統的な職場」には、ニューロダイバーシティな人々にとって排除的、あるいは有害な要素が数多く存在します。
- オープンオフィスの設計
協働性やコスト削減を目的としたオープンな職場環境は、多くの神経多様な人にとっては騒音などの刺激が過剰であり、集中の妨げになります。 - 蛍光灯の光
特に自閉症や感覚処理に敏感な人々にとっては、蛍光灯の光が過刺激となることが多いです。 - 固定された労働時間と「常に対応できる」ことの期待
ニューロダイバーシティな人の中には、定型的な勤務時間ではなく、柔軟なスケジュールで働いた方が能力を発揮しやすい人がいます。 - 暗黙のコミュニケーションルール
職場文化や空気を「察する」ことが求められる風土は、異なる認知スタイルを持つニューロダイバーシティな人々にとっては困難で、不利な状況を生みます。 - 画一的な評価基準
成果よりも「同調」や「入力量」を評価するシステムは、特にニューロダイバーシティな人にとっては不公平になりがちです。
ニューロダイバーシティな人々への職場での配慮
人事がニューロダイバーシティな従業員を支援する最も効果的な方法のひとつが、「配慮」の提供です。興味深いことに、こうした配慮の多くは、神経定型の従業員にも有益であり、職場全体の生産性や多様性向上につながることが分かっています。
例として以下のような取り組みがあります:
- 柔軟な勤務時間やリモートワークの導入
- 明確な連絡先を含む、直接的かつ簡潔なコミュニケーション
- 口頭ではなく書面や視覚的な資料による指示
- タスク管理やメモ支援など、実行機能を補助するツールの提供
EUには、雇用主が「合理的な範囲」での配慮を提供する法的義務があり、それは採用や解雇の場面にも適用されます。ただし、国ごとにその解釈や実施方法は異なります。
より深く知りたい方は、各国のガイドラインを確認するほか、専門家との連携もおすすめします。多くの情報は身体的障害に焦点を当てているため、神経的配慮についての理解を深めるためにはプロの協力が有効です。
インクルーシブ(包括的)な職場とは?
職場におけるインクルーシブ(包括的)な文化は、単に「正しいことをする」だけでなく、戦略的にも大きな価値があります。人事の役割として、インクルージョンがもたらすビジネス面での利点をしっかりと伝えていくことが求められます。
ハーバード・ビジネス・レビューの研究によれば、多様性のあるチームは市場シェアの拡大を報告する確率が45%高く、新規市場を獲得する可能性が70%高いとされています。適切な環境下においては、ニューロダイバーシティな人々は神経定型の同僚よりも生産性が30%高くなるというデータもあります。
透明性を重視した仕組みや制度によって、人々が持てる力を最大限に発揮できるよう整備することが大切です。インクルーシブな職場はゴールではなく、人事とリーダーシップが主導する継続的な取り組みです。
インクルーシブ(包括的)な環境を実現するには
インクルーシブな文化は、自然に生まれるものではありません。企業が意識的に取り組む必要があります。そして、どのような形が最適かは、企業ごとの従業員やニーズによって異なります。
オクタゴンプロフェッショナルズは国際的な組織や企業との連携を通じ、インクルーシブな職場づくりが「理想」ではなく「必須」であると実感しています。貴社の職場では、どのような具体的な取り組みができるでしょうか?もし課題や目標があれば、ぜひご相談ください。
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