オランダのワークス・カウンシル(労働者評議会)は、おそらく企業の中で従業員の利益を代表する最も重要な組織といってよいでしょう。ワークス・カウンシル(オランダ語:wet op de ondernemingsraden、OR)は、従業員自身によって選出された数名の従業員代表で構成されています。これらの従業員代表者たちは、人事部や経営陣と協力し、会社のあらゆる意思決定において、従業員の利益が常に反映されていることを確認する役割があります。オランダでビジネスを展開するのであれば、自社内のワークス・カウンシルと良好な関係を促進することは重要です。今回のブログでは、オランダのワークス・カウンシルについて雇用主として知っておくべきことについて詳しく説明します。

ワークス・カウンシル(Wet op de ondernemingsraden, or)とは?

ワークス・カウンシルは、選出された従業員によって構成される企業内組織で、会社のあらゆる意思決定において従業員の利益が常に反映されていることを確かめることを目的としています。ワークス・カウンシルのメンバーの任期は2~4年で、通常、会社の各部門から任命されます。

従業員は、少なくともその企業で3カ月勤務した後、ワークス・カウンシルに任命される権利を得ます。同じように、従業員はその企業で勤務した6ヶ月後から、ワークス・カウンシルのメンバー選出への投票権を得ます。また、ワークス・カウンシルにおいては、議長および書記(場合によっては副議長)の任命も投票によって決定されます。ワークス・カウンシルのメンバーは、その役割から、企業にとって不利益とみなされ不当解雇の対象にもなりかねないため、解雇からの特別な保護権が与えられています。

ワークス・カウンシルは、貴社のビジネスセクターを代表する集団労働協約(CAO)または労働組合と同じではありません。また、人事部のように従業員個人の問題を扱うこともありません。ワークス・カウンシルでは、特に従業員全体に影響を与える問題を対象とした活動をおこないます。

私の会社にもワークス・カウンシルが必要ですか?

オランダでは、50人以上の従業員を雇用する企業は、ワークス・カウンシルを設立する法的義務があります。従業員数が50人未満の場合、従業員の過半数が要求しない限り、ワークス・カウンシルは法律上必要ありません。その場合、ワークス・カウンシルではなくとも、他の形態の従業員代表(スタッフミーティング、オランダ語でpersoneelsvergaderingなど)などを代わりに設けることも可能です。従業員が50人未満の場合、従業員の過半数がそれを要求しない限り、従業員代表は法的に義務付けられていません。 

ワークス・カウンシルの責任範囲

従業員の利益を守るため、ワークス・カウンシルにはいくつかの特権があり、会社の人事部および経営陣はこれを尊重しなければなりません。ワークス・カウンシルの権利は以下の通りです。

  • 従業員に大きな影響を与える決定や対策について、経営陣や人事部から相談を求められる権利
  • 従業員の労働条件を変更する必要がある場合、合意を与える権利
  • 経営陣が考慮すべき提案を行う権利

その後、ワークス・カウンシルは、できる限り最良の情報を提供し、または最良の決定を下すための行動計画を策定する責任を負います。これには、従業員の調査から専門家の雇用、調査の調整まで、あらゆるものが含まれます。 

企業としては、ワークス・カウンシルの全メンバーが効果的に職務を遂行できるよう、そのための研修を行う責任を負います。また、メンバーが通常の勤務時間内に、ワークス・カウンシルのための仕事を行うための十分な時間(少なくとも年間60時間)を提供しなければならないとされています。さらに、ワークス・カウンシルは少なくとも年に2回、経営陣とミーティングを実施することが求められます。

ワークス・カウンシルに相談するタイミング

会社が従業員に大きな影響を与える決定を行おうとする場合は、常にワークス・カウンシルに相談をした上で、行わなければなりません。以下は、ワークス・カウンシルに相談が必要な場合の例です。

  • レイオフや組織の再編成
  • 報酬および福利厚生構造の変更
  • 従業員の福利厚生の変更(在宅勤務の支援、職場で使用する機器、ジムの会員権など)
  • 標準労働時間の変更
  • 転勤
  • 経営幹部の変更(メンバーの追加または入れ替え)
  • 新しいITシステムの導入

ワークス・カウンシルの承認が必要な場合

会社は、従業員全体に影響するほとんどの決定について、ワークス・カウンシルの助言を念頭に置いて行う必要がありますが、いくつかの事柄においては、ワークス・カウンシルの承認を得る必要があります。これは以下のような事柄が対象となります。

  • 年金保険(またはその他の貯蓄制度)の変更
  • 労働時間、休憩時間、休暇の変更
  • 給与や業績評価の変更
  • 任命、解雇、昇進に関する方針
  • 社員研修に関する規則
  • 人事考課に関する規定
  • 社会的問題を抱えた従業員を支援するための取り決め
  • 労働相談会(通常、従業員とラインマネージャーたちの間で行われる)についての規則
  • 苦情処理手続き
  • 従業員の個人情報の取り扱いおよび保護
  • 従業員の勤怠、行動、実績に関する監視およびモニタリング
  • 内部告発者の保護に関する手順

日本企業のオランダでの成功をワンストップサポート

雇用主として、ワークス・カウンシルと強力な関係を築くことはとても重要です。ワークス・カウンシルと良好な協力関係にある企業は、コンプライアンス違反による問題が少なく、従業員もより満足度が高く、よりプロアクティブに仕事をするという傾向がうかがえます。もし、貴社がワークス・カウンシルや他の労働者代表制度の設立サポートを必要とされる場合、またはワークス・カウンシルについての専門知識が必要な場合は、現地の人事専門家であるオクタゴン・プロフェッショナルズのジャパンデスクまでご相談ください。

オランダの雇用主なら知っておきたいワークス・カウンシルとは?

ワークス・カウンシル(労働者評議会)がどのようなものかご存じですか。ワークス・カウンシルはおそらく企業の中で従業員の利益を代表する最も重要な組織といってよいでしょう。オランダでビジネスを展開するのであれば、自社内のワークス・カウンシルと良好な関係を促進することは重要です。

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