解雇-それは誰にとっても簡単なことではありません。解雇されるスタッフ本人にとっては勿論のことですが、オランダでの解雇手続きにまったく馴染みのない雇用主や人事担当者にとってもそれは同様です。今回のブログ記事では、オランダ雇用主に認められている範囲内での解雇プロセスを説明していきます。実際に貴社にて解雇プロセスを進める場合は、法律の専門家からアドバイスを受けることを強くお勧めします。

スタッフを解雇できるのはどのような場合がありますか?

一般的に、オランダでは解雇が公正であると認められる状況が4つ定められています。

  • 双方の合意による解雇
  • 経済的理由による解雇
  • 長期的な就業不能(病気や怪我)を理由とする解雇
  • 重大な違反を理由とする緊急の解雇

双方の合意による解雇

企業がスタッフとの解雇を進める方法として最も望ましいのは、スタッフ本人と契約解消の合意に至ることです。適切な戦略を立てて正しく行えば、双方合意は解雇プロセスを長引かせることなく、スタッフの感情的負担もできる限り小さく抑えることが出来ます。

双方合意による解雇の場合、雇用主とスタッフが具体的な条件について書面で合意したことを示す、和解契約書を交わすことを強くお勧めします。和解契約書には、スタッフが金銭的報酬と引き換えに雇用契約を終了することに同意したこと、契約終了後は雇用主に対する請求権を持っていないことが明確に述べられていることが重要です。

また、和解契約書について、解雇されるスタッフには14日間のレビュー期間が与えられるという点に留意してください。レビュー期間とは、解雇に関する和解の合意をしてから14日間以内であれば、スタッフはその理由に関わらず同意を撤回することができるというものです。雇用主は、この権利に関してスタッフに通知する必要があります。

双方合意を実現するには?

スタッフと解雇の合意を実現するにおいて、スタッフへの再就職支援の提供、そして適正な退職金パッケージの提供は重要なポイントです。また、退職金パッケージの内容は、スタッフによって異なります。勤務年数、ライフスタイル、扶養する家族の有無、駐在員か現地人か等、スタッフの様々な状況を考慮した上でスタッフが納得する退職金パッケージの内容を検討する必要があるでしょう。

オランダの労働者保険機関(UWV)による解雇許可

スタッフから解雇への同意を得られない場合は、特定の状況下において、雇用主は労働者保険機関 (UWV)に解雇許可を求めることができます。特定の状況とは、雇用主にスタッフの給与を支払う財政的余裕がない場合、またはスタッフが病気や怪我により長期的に就業不能となった場合を指します。UWVは状況を調査の上、雇用主に解雇許可を与えるかどうかを決定します。UWVは労働者の雇用を維持することを一番の目的としているため、雇用主がスタッフ解雇の選択に至るまでに、当該スタッフの雇用維持のためできる限りの努力を行ったかどうかを審査します。

UWVへの解雇許可の申請は、こちらからオンラインで行うことができます。

経済的理由による解雇

会社の経済状況の悪化は、通常、解雇の妥当な理由とみなされます。UWVは、経済的理由による解雇が認められる7つのケースを下記のとおり定めています。

  • 勤務時間の短縮
  • 会社の移転
  • 組織の再編成および/または技術的変更
  • 企業活動の(一部)停止
  • 会社の倒産
  • 補助金(報酬費用)の失効

長期的な就業不能(病気や怪我)を理由とする解雇

オランダの法律の下では、スタッフが病気または妊娠中である場合、最初の2年間は雇用主は雇用契約を終了することはできません。しかし、病気休暇が2年を経過すると、病気によるスタッフの就業不能を理由とする解雇制限はなくなります。病気による長期就業不能のスタッフを解雇するには、雇用主から申請書および産業医による診断書をUWVに提出する必要があります。診断書には、スタッフが26週間以内に回復することが不可能であることが示されていなければなりません。また、このスタッフにとって解雇が唯一の現実的な選択肢であること、病気になる前にスタッフが就いていた職務に復帰させようとしたこと、またはスタッフに対して企業内で新しいポジションを見つけようとしたことを雇用主として示せることが必要となります。

長期的な就業不能(病気や怪我)を理由とするスタッフの解雇許可の申請は、UWVウェブサイトのこちらより行うことができます。

地方裁判所

UWVに通知する他には、地方裁判所に雇用契約の解除を求めることも可能です。地方裁判所を通じての解雇手続きは、UWVの解雇許可よりも速く短期間で雇用契約を終了しなければならないような状況に対応するための手段です。

重大な違反を理由とする緊急の解雇

雇用主は、緊急性を要する場合に限り、スタッフを即時に解雇することが可能です。この緊急解雇は、スタッフの行為が雇用主との雇用関係を意図的に破壊するようなものである場合に検討されますが、オランダでは実際こうした解雇のケースは非常に稀です。また、緊急の解雇の場合、雇用主は、直ちにその解雇理由をスタッフに通知し、スタッフが自己弁護のための法的なサポートを要求できるように支援する必要があります。

緊急解雇の理由と責任がスタッフにあると判断された場合、スタッフには失業手当や退職金を受け取る権利はありません。

退職金には何が含まれる?

原則、雇用主によりスタッフが解雇された場合、当該スタッフは退職金を受け取る権利を有します。雇用主とスタッフの双方の合意により雇用関係が終了する場合、その場合の退職金に関する法的要件はそれほど多くありませんが、スタッフが合意するような内容の退職金パッケージをオファーする必要があります。

解雇の理由に応じて、雇用主はスタッフに対し、以下の3つの金銭的補償を行うことが法律上求められます。

移行手当:2020年1月1日より、雇用主は解雇されたスタッフに対し、月給総額の1/3の金額を雇用初日から数えた勤続年毎に移行手当として支払う義務があります。ただし、スタッフの非行や会社の破産宣告などによる解雇の場合は、移行手当のルールに例外が適用される場合があります。

累積事由に基づく追加手当:2020年より、裁判所が雇用契約を終了させる場合の解雇根拠に関して、新たな条件が追加されました。この追加手当(移行手当の上乗せ)は、それらのすべての解雇根拠が存在しないにも関わらず解雇となるスタッフに支払われます。

重大な過失があった場合の補償:重大な非行が雇用者によって行われた場合、裁判所がスタッフへの補償を雇用主に対して強いることがあります。

さらに、和解交渉を容易にするために、退職金パッケージにいくつかの項目を追加検討することをお勧めします。退職金パッケージは、(上記に挙げた)法的に求められている金銭的補償だけではなく、スタッフが次のステップに進むためのサポートを含めてその内容を検討すると良いでしょう。以下は、退職金パッケージに追加できるアイテムの一例です。

  • 推薦状
  • スタッフが法的サポートを受けるための予算
  • キャリアコーチング
  • 求職または職業斡旋サービス
  • 解雇後の会社備品(電話、ノートパソコンなど)の保持
  • 勤務免除または休暇の無制限付与

オランダの雇用に関するエキスパート

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