日本企業で働いた経験がある人であれば、だれでも有給休暇取得の難しさを感じたことがあるのではないでしょうか。企業にもよりますが、毎年の有給休暇をすべて使い切ったことがあるという人はいないのがほとんどでしょう。そうした日本企業におけるの有給休暇の取得状況とは大きくことなり、一般的にオランダ企業の人事チームや管理職は、社員の有給休暇取得に非常に積極的です。

今回のブログでは、オランダの企業が社員に対して積極的に有給休暇の取得奨励をする本当の理由をお話いたします。

休暇取得による生産性の向上

オランダの人事担当者は、あなたが休暇をとることで、休暇後の仕事の生産性が上がると考えているため、社員が休暇を取ることを望んでいます。実際に、定期的に休暇を取る人は取らない人よりも幸福度が高く、生産性が高いという研究結果が出ています。休暇を取ることでリラックスして心とからだを充電することができ、休暇明けにはリフレッシュして仕事に取り組むことができます。今度、オランダで人事担当者が休暇を取るように勧めてきた場合は、ぜひ躊躇せずに休暇を取得してください。

社員のバーンアウト(燃え尽き症候群)を最小限に抑える

2021年、オランダの企業で働く人の15.7%がバーンアウトの症状を訴えたといいます。一般的にオランダ人は健康的なワークライフバランスに関する明確なビジョンを持っている人が多く、バーンアウトのリスクは比較的低くなっています。しかしそれでも、今日オランダの人事担当者にとって、社員のバーンアウトを減らすことは最重要課題となっています。

人事担当者は、バーンアウトが社員本人だけでなく、企業のビジネスに与える影響をよく理解しています。

オランダでは、バーンアウトは長期的な病気とみなされ、疾患した社員は職場再復帰プログラムに参加する権利があるとされています。雇用主にとっては、社員が長期的な病気となってしまった場合、産業医と社員の面談のアレンジメント、「職場復帰計画」の作成(社員が病気により少なくとも8週間就業不能だった場合のみ)、労働者保険事業団(UWV)への報告義務など、さまざまなことが必要になります。

それゆえ、オランダの人事担当者は、社員に過剰労働を強いることによって会社が得る短期的な利益は、社員のバーンアウトによって発生する長期的なコストに見合わないことを理解しています。そして、そうしたバーンアウトを防ぐための一つの方法として、社員に休暇を取ることを勧めます。

未取得の有給休暇は雇用主にとっての金銭的負債

オランダでは、雇用契約にて定められた労働時間に基き、年間を通じて有給休暇が累積されます(詳しくはこちらをご確認ください)。社員の退職時には、雇用主は未取得の有給休暇を金銭として支払う義務がありますが、この義務は雇用主にとっては金銭的な負担となります。それゆえ、オランダの人事担当者は社員の未取得の休暇数を常に確認し、取得できるタイミングがあればいつでも取得するよう、社員に奨励するのです。

しかしオランダでは、この有給休暇の買い上げには高率の税金が課せられます。つまり、有給休暇を金銭として受け取るつもりで溜め込むことは、最善の策とは言えません。つまり、有給休暇を使用しないでおいておくことは雇用主にとっても社員にとっても損をすることとなり、それゆえ有給休暇はきちんと取得するのが得策といえるでしょう。

未取得の有給休暇数の確認の複雑さ

オランダの全ての労働者は、週40時間以上働いた場合、20日間の有給休暇を取得する権利を有します。多くの場合、その法定の20日に加え、各社の裁量により追加の有給休暇が付与されます。標準的には、年間合計25~30日(祝日を含む)の有給休暇を付与する企業が多いといえるでしょう。

法定有給休暇、祝祭日、会社規定による追加の有給休暇…それらの有給休暇がいつ使用されたかによって、どの有給休暇が先に消化されるかが異なります。付与から最大1年半後に失効するものもあれば、5年後に失効するものまで、それぞれの失効期間が異なるためです。そのため、どの有給休暇が取得されたかを記録しておく必要があります。

使わないと損をする

これは会社のポリシーに大きく依存しますが、ほとんどの会社では、有給休暇は一定期間後に失効します。言い換えれば、「使わないと損をする」ということです。ほとんどの場合、付与された年の年末から6カ月後に失効します。

まとめ

社員が仕事を休まなければならない理由は様々です。雇用主としては、変化する法律を確実に遵守し、社員に取得可能な休暇の権利を明確に伝えることが求められます。  オランダがOECDによるとワークライフバランスで最も優れていると評価されているのは、こうした休暇取得の権利によるところも大きいでしょう。社員のメンタルヘルスの観点から、適度な休息は欠かせません。ビジネスの観点からも、社員に気遣いやサポートを提供することは、定着戦略としてもメリットがあります。

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